vol.11 ~デインドン~
2007年3月23日(金)~26日(日)
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挨 拶
座長はあまり歌がうまくない。
彼は、とても心地よさそうに鼻歌を歌う。あまりに心地よさそうなので、その歌が何の歌なのか聞いてはいけないと思う。よーく聞いてみると「イージーライダー」だ。心地よく歌うわけだと周囲は頷く。その歌の心地よさを周囲も知っている。だからか、誰も彼に何も言わずへたくそな鼻歌をBGMに仕事をする。この時間、この場所を愛しく思うんです。—これが作品を書くにあたっての発端。
今回のタイトル「デインドン」は英語圏での鐘の音「ティンドン」からとりました。
私にとって、鐘の音といえば「ゴォ~ン」または「カランコロン」。犬の声も「バウワウ」とは聞こえない。ましてや鶏の鳴き声が「クックドゥドゥルドゥ」などとは想像を超えた域。
さて空気ノ機械ノ尾ッポの「音」は、どう聞こえますか?
今回のお芝居は、「音」です。
お芝居は、時にはオルゴールのように、また、ラジオのように、また、工事現場のように、様々な音が鳴りやまずに続いていきます。
途中、お客様に挑戦していただくこともあります。何卒、よろしくお願いいたします。
80分の『音』をどうぞ、聴いてくださいませ。
空気ノ機械ノ尾ッポ 松川晃子
舞台風景
舞台は、空き缶で作りました。様々な色をまとった空き缶達で出来る世界をお楽しみください。下手奧にあるのはワイヤーで繋いだ缶のすだれ。全部で400本くらいを使用しました。舞台上には200本くらいをばらまいています。
台本抜粋
~シーン4.聞いて欲しい より~
E 音が鳴る
F うん
E こんな音
F うん
E こんな音でもなくてよかったのに
F それぞれの性質の違いでその音だ
E こいつが選んだ音なのか?
F 何も考えてなんかいないさ、モノだ
E 発するモノがあるのに?
F 発していてもモノだ
E 何か言っているんじゃないかと思う
F なんでそんなこと言ってるんだと思う
E なるほどね
F 君はこいつ、私は君を知りたいよ
参考資料作品について
● ロミオとジュリエット
ロミオとジュリエットの別れのシーンに雲雀が出てきます。
「デインドン」のラストシーンはそれを引用しています。
さて、これは、お陽さまと雲雀の話です。
むかし、お陽さまは、地上に住んでいました。お陽さまはとっても貧乏で天上へ行く事ができません。どうにかならないものかと、考えました。一方、雲雀は、大金持ち。空をすいすいと優雅なくらしをしています。ある日のこと、お陽さまと雲雀がぱったり逢いました。大困りのお陽さま、大金持の雲雀に借金を申込みました。
「それはそれは、お困りのことでしょう」と雲雀。
「貸していただけますか」「はい、はい」とお陽さまは雲雀に、借金をしました。借金したものの、お陽さまは悔しくてたまりません。それから、大奮発。朝早くから、夜遅くまで、せっせせっせと働きます。少々、働き過ぎほど働いて、借金を返しました。でも、働き癖ってあるのでしょうか。お陽さま、それからも休まず働き、立身出世をなさいます。そして、天上へ昇ることができました。
こんなことがあってから、金貸しの雲雀は
「お陽さまに 金貸した お陽さまに 金貸した」
と、鳴きながら、天へ昇って行こうとします。天まで、行けるわけがありません。お陽さまは、雲雀がうるさく叫ぶのが気になってしょうがありません。
雲雀は鳴きます。
「日 一分 日 一分 利 取る 利 取る」
なるほど、お金は返金したとはいえ、利息の計算はしなかったのです。お陽さまは「私は、春になると朝早くから、明るくしたり温めたり、雨を降らせたりしているのだから、利子は負けておくれ!」 と、言います。それでも、雲雀は負けません。毎日、毎日、
「ヒ イチブ ヒ イチブ リートル リートル」
と、鳴きながら天へ舞い上がります。
雲雀の鳴き声に耳をすませて聞いてみてください。「日 一分、利 取る」と、聞こえます。
これは、東北地方にある民話です。
著・松川晃子
公演概要
2007年3月23日(金)~26日(日)
目白 シアター風姿花伝にて
作・演出 空気ノ機械ノ尾ッポ | |
出演 | 原寿彦 / 松川晃子 / 平純一郎 /滝友美
高橋清彦(アクターズオフィス) / 有働マコ / 小高 章 / 能村祥代 / 来栖隆文 / 北 昂 / 大数みほ / 林田剛志 |
Stuff | 照明:池田圭子 / 宣伝美術:井手口智人
音響:仙浪昌弥 / 舞台監督:岩間麻衣子 制作:空気ノ機械ノ尾ッポ |